結論から書くと、このモバイルバッテリーは買って失敗でした。
公称5,000mAhで1,400円ほど。サイズも目的のデバイスにぴったりで、スタンドにもなる。スペックだけ見れば理想でした。 ところが実際に使うと、フル充電から3〜4時間で電源が落ちました。
何に使うつもりだったのか
目的は、M5Stackで作った音声入力デバイスをケーブルレスにすることでした。
先日、M5Stack CoreS3 SEで音声入力のデバイスを作りました。 押して喋ると、Macの入力欄に文字が入る仕組みです。
詳しい作りは、こちらの記事にまとめています。
このデバイスはUSBケーブルでMacにつないでいます。 ケーブルがあると、席を移動するたびに抜き差しが必要になります。
そこで目をつけたのがモバイルバッテリーです。 条件は3つでした。
- 小さくてM5Stackに直接挿せること
- 朝つないだら夜まで持つこと
- 安いこと
選んだ製品のスペック
条件に合う製品として、楽天のEle Goods(型番AD102)を選びました。
| 項目 | 公称値 |
|---|---|
| 容量 | 5,000mAh |
| 出力 | 5V / 2.1A |
| サイズ | 74×25mm(口紅サイズ) |
| 価格 | 1,399円 |
| 認証 | PSE取得 |

容量5,000mAhなら、少なくとも1日は持つだろうと考えました。 実際の消費電力が分からないので、根拠のある計算ではありません。 それでも「朝つないで夜まで」くらいは持つはず、という期待でした。
届いたもの
開封した時点では、かなり期待していました。
パッケージ

第一印象は「安っぽい」でした。 厚紙にビニールの窓を貼っただけの台紙で、緩衝材も入っていません。 「SMART / PORTABLE」の金帯が、逆にチープさを強調しています。
とはいえ、1,400円の製品に箱のコストはかけられません。 ここで評価を下すのは早いと自分に言い聞かせました。
付属品と本体

付属品は本体とUSB-A to USB-Cの充電ケーブルの2点だけです。 説明書は入っていませんでした。
本体はマットな黒で、質感は価格の割に悪くありません。 手に持つとずっしりと重さがあり、セルが入っていることを感じさせます。 ストラップも付いていて、これは地味に便利でした。
接続部(Type-Cコネクタ)

この時点で、期待はかなり高まっていました。
Type-Cコネクタが本体から直接生えていて、ケーブルなしで挿せます。 さらに保護キャップまで付いています。 キャップは紛失しないよう本体と繋がっていて、作りも思ったより丁寧でした。
横にはLightningコネクタも並んでいます。 2種類を1台に載せているので、iPhoneとAndroidの両方を充電できます。
サイズもM5Stack CoreS3 SEにちょうど合いそうで、狙いどおりでした。
残量表示

残量は3桁の数字で表示されます。 写真は充電中のもので、88%と出ています。
数字で見えるのは便利です。 「あと何回充電できるか」が分かるので、モバイルバッテリーとしては理想的な機能です。
この表示を信じていたからこそ、次の失敗が起きました。
実測結果
期待は3回とも裏切られました。
1回目:開封直後
初期残量は約60%でした。 半日くらいは動くだろうと思って使い始めました。 ところが残量40%付近で突然電源が切れ、挿し直すと0%表示でした。
まだ一度も充電していなかったので、最初はそういうものかと思いました。
2回目:100%まで充電
翌日、満充電にしてから使い始めました。
| 経過時間 | 残量表示 |
|---|---|
| 開始 | 100% |
| 1時間 | 約80% |
| 3時間 | 約30% → 突然電源断 |
| 再接続 | 0% |
合計3時間ほどで切れました。ここで初めて「おかしい」と気づきました。
3回目:手持ちの4,000mAh品で対照実験
M5Stack側の消費電力が原因なのかを確かめるため、手持ちの4,000mAh品に差し替えました。 朝から同じ使い方で動かしたところ、12時間以上止まりませんでした。
これで原因が確定しました。デバイスではなく、バッテリー側です。
| バッテリー | 公称容量 | 実測稼働時間 |
|---|---|---|
| 問題の製品 | 5,000mAh | 3〜4時間 |
| 手持ちの製品 | 4,000mAh | 12時間以上 |
公称容量では問題の製品が25%大きいのに、実測では3分の1から4分の1しか持ちませんでした。
残量表示が信用できない
突然切れる挙動そのものが、この製品の品質を示しています。
30〜40%という表示から一気に0%になります。 つまり残量計が実際の残量を反映していません。
先ほどの写真の青い数字は、使っているうちにこのように嘘をつきます。 40%と出ているのに、数分後には電源が落ちて0%になる。 数値があるからこそ、余計に裏切られます。
リチウムイオン電池は、残量0%付近まで使うと電圧が急に落ちます。 正しい残量計なら、その手前で残量を小さく見せるなどの補正をします。 この製品はその補正がなく、表示だけが先に進んでいる状態です。
結果として、使える残量が分からないまま電源が落ちることになります。 モバイルバッテリーは「あと何時間持つか」が分かって初めて役に立ちます。 その前提が崩れているので、容量以前に製品として成立していません。
商品ページの「急速充電」について
購入後に気づいた点を書いておきます。
- 出力は5V / 2.1A固定で、USB PDには対応していません
- 「2.1A急速充電」は「1.0Aの倍以上」という比較表現です
- iPhone 15以降が対応する20W級のPD充電はできません
つまりUSB-Cのコネクタは付いていますが、USB-Cの高速充電器ではありません。 「USB-Cモデル」という言葉から最新の充電規格を想像すると外します。
なお、購入時点でレビューは121件・平均4.22でした。 低評価のレビューには「40%で切れて0%表示になる」「4,000mAhの他社品より持たない」という報告があります。 私が踏んだのと同じ現象です。買う前に読むべきでした。
合っていた点
悪い点だけではないので、そこも書いておきます。
- サイズはM5Stack CoreS3 SEにぴったりで、挿したまま片手で持てる
- 収納式のスタンドがあり、置いて使える
- 残量が数値で見える(ただし精度は上記のとおり)
- 1,400円という価格
形と値段は良かったのです。唯一にして致命的な要件である「容量」が満たせていませんでした。 モバイルバッテリーは容量が機能の本体です。それが成立しないなら、他の利点は意味を持ちません。
安さそのものがリスクだった
今回いちばん効いた教訓は、価格の安さそのものでした。
1,400円という価格は魅力的です。 同じ容量でも、実績のあるブランドの製品は価格が上がります。 半額以下で買えるなら、多少の不安はあっても試したくなります。
ただし、安さには必ず理由があります。 今回感じたのは次の3点です。
- セルや残量計の品質を落として価格を下げている可能性がある
- 個体差が大きく、当たりを引くかどうかが運になる
- 外れを引いたときの保証が「弊店にご連絡ください」程度で、実効性が分からない
実際、私の個体は公称の3分の1しか持ちませんでした。 同じ製品でも正常に動く個体はあるはずです。 それでも、外れを引いたときに失うのは金額だけではありません。
捨てるのも簡単ではない
モバイルバッテリーは、要らなくなっても簡単には捨てられません。
これが今回いちばん痛いところです。 動かないバッテリーは、手元にある限りずっと場所を取ります。
リチウムイオン電池は、燃えるごみに混ぜると収集車や処理施設で発火します。 そのため各自治体は、モバイルバッテリーを通常のごみとして収集しません。
処分の窓口は限られています。
| 窓口 | 受け付けられるもの |
|---|---|
| JBRC回収協力店(家電量販店など) | JBRC会員メーカーの製品。膨張・破損がないもの |
| 自治体の窓口・拠点 | 会員外の製品、膨張・破損したもの |
厄介なのは、回収協力店が受け付けるのはJBRC会員メーカーの製品に限られる点です。 格安品は会員でないことがあります。 膨張や破損があれば、どの店でも断られます。
つまり、こうなります。
- 店頭では断られる
- 自治体の窓口まで平日に持ち込む必要がある
- そのために電極にテープを貼り、絶縁して持参する
1,400円で買ったものが、動かないうえに手間だけ残す結果になりました。 捨てるために半日を使うくらいなら、最初から3,000円出して信頼できるものを買うべきでした。
買う前に確認すべきだったこと
次に同じ失敗をしないためのチェックリストです。
- 公称容量ではなく、実測レビューを探す
- 低評価レビューに「〇〇%で切れる」と書かれていないか確認する
- 手元の予備バッテリーで先に対照実験して、必要な容量の当たりをつける
- USB PD対応かどうかを、コネクタの形ではなく仕様で確認する
- 自治体の回収対象か、JBRC会員メーカーかを買う前に調べる
3つ目は今回いちばん効きました。 自分のデバイスが1時間にどれだけ消費するか分かっていれば、5,000mAhで足りるかどうかを先に判断できました。
まとめ
- M5Stackの音声入力デバイスをケーブルレスにするため、5,000mAhのモバイルバッテリーを購入した
- 結果はフル充電から3〜4時間。公称5,000mAhの製品として使いものにならなかった
- 同じ使い方で4,000mAhの手持ち品は12時間以上動いた。原因はデバイスではなくバッテリー
- 残量表示が30〜40%から突然0%になる。残量計が機能していない
- サイズ・スタンド・価格は良かったが、容量が成立しないので評価できない
- 安さには理由がある。外れを引くと金銭以上のものを失う
- 動かないモバイルバッテリーは捨てるのも手間。店頭で断られ、平日に自治体の窓口へ持ち込むことになる
- 次は実測レビューと低評価の内容を確認し、手元のバッテリーで先に消費電力を測る




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